中堅ゲームプランナーの考え事

中堅ゲームプランナーのリアルと考えをつらつらと

#3 中途入社者への期待と現実

FF6のゴゴとかいう謎の仲間www : ゆるゲーマー遅報

今週は仕事始めの週で、人の入れ替わりも活発な時期。
私のチームにも新たに中途入社の方が加わったりしたので、今回は中途入社直後のアレコレについて自身を振り返りつつ、思ったことを書いてみる。

中途の前評判

「カプ◯ンで7年◯◯やってた人が来るらしいよ」

「バン◯ムの◯◯でチームリーダーやってた人らしい」

「東◯で5年アニメ作ってたらしい」

内定承諾〜アサインまでの期間、現場では大抵こんな噂が立つ。会社名と携わったプロジェクトから、その人に対する人物像と期待が醸成されていく期間。

人が増えるのは単純に喜ばしい&ワクワクするイベントなので、悪気なく期待が膨らんでいく

そして、特にゲームプランナーは携わるタイトルと担当箇所によって仕事の領域がガラりと変わるので、期待度はタイトルにかなり引っ張られる。

たとえ経験している領域が全く同じ(例えばRPGのサブクエ担当同士)であっても、タイトル次第でやってることは千差万別。

求められるセンスとスキルの違いは一目瞭然

もし上記のような大型タイトルであればゲームプランナーは基本触っているので、面接をせずともその人に期待するスキルや振りたい仕事が頭に浮んでくる。

そして実際に会って前職の開発環境を聞いてみると、思ったよりローテクな作りであったり、開発環境が凄惨だったりするもの。経験上、8割方「あんなに有名なゲームがそんな環境で作られていたなんて!」となる。どこも奇跡的なバランスでゲームが成り立ってるんだなぁと感慨深い。

初めて転職する側の心境

初めての転職は不安なもの。
私も一昨年に人生初の転職をしたので、転職する側の心境をまだ鮮明に覚えている。

  • これまでの開発環境とどれだけ違うんだ? 
    • 求められるクオリティラインは?
    • 仕事のスピード感は?
    • 他職種との接し方はどう変わる?
    • 仕様書やタスク管理の文化はどれだけ違う?
  • プロジェクトの空気感は?
    • 気難しい人や厄介な人がどれだけいるのか?
    • 全体的にピリついていた空気なのか?緩いのか?
    • 活気とスタッフの意欲度は?
    • 指示系統はまともなのか?
    • スケジュールの切迫度は?
  • 労働環境は?
    • 残業時間は?
    • 責任領域の広さは?
    • どれだけプレッシャーがかかる?
    • 勤怠の緩さは?
  • 自分が求める環境はあるのか?
    • どれだけこだわれる?自分のエッセンスが出せる?
    • どれだけ裁量を持てる?
    • 優秀な人はいる?
    • ライフワークバランスはどうなる?

考えたところで仕方のないことばかりだが、なんせこれまでの職場を他所と比較したことがなく基準がないので、大抵はこんなことが頭に浮かぶ。

さらに企画職のシゴデキ具合はピンキリなので、使えない奴は本当にどうしようもないくらい使えない(居る意味がない)し、使える奴はそいつに全てを委ねたくなるくらい使える。それが分かるからこそ、より不安になる。

当人のスペック次第では、創造性が不要な単純作業しか回されなくなる可能性があるのが企画の怖いところ。
※こういった問題の対策として、1年単位でクビにできるように「正社員では取らず全員契約社員で採る」というゲーム会社も存在する。有名どころだとスク〇ニとか。
※ちなみに私の現職で、実際にクビになった人を初めて見かける機会があった。詳しい話は聞いてないが、2~3年目の新卒入社で、仕事ができない上に素行が悪かったため自主退職(という名のクビ)となった模様。コワイ。

大袈裟だが、「新しい現場でもし自分が使えないヤツだったらどうしよう…最悪数ヶ月でクビかも…」くらいの憂いを抱いてしまう人もいるかもしれない。

半面、躁鬱でいう躁状態のときには「俺が世界を変えてやるんじゃい!」くらいの意気込みと、どれだけ自分が通用するのか楽しみというワクワク感があったりなかったり。

FF6のゴゴとかいう謎の仲間www : ゆるゲーマー遅報

残酷な現実①

ポータブルスキルが抽象的な物が多く、プロジェクト次第で仕事の内容もガラりと変わるゲームプランナーは、前職の経験を活かしづらい。よって配属直後は「生まれ持ったもの」がものを言う。それは頭の良さであったり、コミュ力であったり、人心掌握力であったり、図々しさ(意外と重要)だったり。

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そして配属から1ヵ月もすれば大方の「開発状況」「周囲との人間性能差」「その上で自分に求められていること」を認識させられることとなるだろう。(受け入れる側は更に短い期間でその人の人間性能をなんとなく察してしまうし、それによって接し方も変わる。残酷。)

残酷な現実②

前職の経験が活かしづらいのには他にも理由がある。それは、企画の内容は「誰がどのタイミングで言ったか」が重要であるからだ。(これは「ゲームプランナーに対する評価はどのように決まるのか」が大きく関係してくるのだが、長くなるのでこれはまた別の機会に。)

ぎゅっと要約すると、”その会社内での“信頼と実績によって動かせる範囲が変わるという当たり前の結論なのだが。

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成果が示しづらい企画職だからこそ、前職でどうであったかは関係なく、立場も仕事の内容もまた新入りまで戻るため、また1から実力を周囲に示し続けなければならない日々が始まる。

それでもやるしかない

現場では「自分が何を求められているかを認識し、身の丈に合った範囲で最大限のパフォーマンスを出す」ことが求められ、これが結果的に最もゲームのクオリティに貢献することになる。会社員としてゲームを作るとはそういうことで、こういった姿勢を継続することでしか信頼は積み上がらない。

これが分からず勘違いして図に乗っている開発者を稀に見かけるが、非常に周りに迷惑が掛かるのでやめていただきたい。特にデザイナー職に多い傾向(唐突なディス)

どれだけ前職の経験と実績があろうが、中途入社のゲームプランナーはこれを留意した上でプロジェクトに対して自身を最適化し直す必要がある。この最適化が済んで初めて新天地のスタートラインに立てたと言えるだろう。

ボス戦タイムアタック - やり込みinFF

この域まで来るのに、平均して2か月~3か月は掛かると思う
3ヵ月もすれば大体の人が職場に馴染むのもこのためかもしれない。

クリエイティブ職としてのプライドは持っていてもいいが、こういったことを忘れた途端に現場では摩擦が起き、色んな人から恨みを買うことになる。ゲーム会社でゲームを作るということ、そしてゲームプランナーの転職とは、そういうもの。

...なんとも爽快感がない話だったが、もし初めての転職を控えているゲームプランナーがいれば、現実問題として考えておいて欲しい。これを弁えていれば、少なくとも嫌な顔をされることは無いはずだ。

それではまた次回。

#2:ゲームプランナーとプロジェクトの相性

こんばんは。
悶々と現職場と自身の相性について考える三が日でしたので、考えを整理するための記事を書いてみようと思います。

前職とのギャップ

一昨年に転職したばかりの私にとって、現職場の環境にまだ適応仕切れていません。これは、元を辿ると「プロジェクトの規模感の差」「クオリティラインの差」という環境の変化が原因だと思ったため、このギャップを取っ掛かりに以下のような考察をしてみようと思います。

  1. ゲームプランナーの属性を定義し、自身のプランナーとしての立ち位置を整理してみる
  2. 前職と現職のプロジェクトの差を「規模感」と「クオリティ」の二軸で比較してみる
  3. プロジェクトの差によって、プランナーに求められる属性にどんな差があるのかを考察してみる
  4. プロジェクトの差と自身のポジションを照らし合わせることで、現職場に適応するために必要な要素を洗い出す

ゲームプランナーの属性を定義する

ゲームプランナーの属性を以下のように分類し、自身の立ち位置を同僚と比較してみます。

  • 横軸:0→1が得意か、1→10が得意かみたいな話。
    • 生産性:制作進行能力、実装能力(決まったものを推し進める力)
    • 創造性:問題提起力、提案力(必要なものを探って提案する力)
  • 縦軸:特化型か、平均型か。

  • 私:基本なんでもやるけど、システムより企画が強めの平凡マン
    →企画とサウンドは得意だけど、システム構築とビジュアルは微妙。
  • 同期A:学歴最強のシステムつよつよマン
    →システムつよつよマンだが、抽象的なものや企画は苦手そう。
  • 同期B:専門卒のハイスタンダードマン
    →基本そつなくこなすが、ディフェンシブな性格。

プロジェクト性質と相性

PJの性質とプランナーの属性を照らし合わせることで、私にはどんなPJが相性が良いのか?ということを考えてみます。

【#1:PJの性質】

現PJと前職のPJを、「規模感」と「クオリティ重視度*1」によってポジショニングしてみます。

  • 前職STG:超小規模かつ、納期は絶対でズバズバ仕様をカットしていたPJ
  • 前職音ゲー:小規模かつ、納期は絶対だがみんなそこそこ頑張ったPJ
  • 現職RPG:中~大規模かつ、クオリティのためなら納期ズラしもアリなPJ
【#2:PJの差とプランナーの属性】

プロジェクトの差によって、プランナーに求められる属性にどんな差があるのかを考えてみます。

今回はこのように相関すると仮定してみました。

  • 創造性⇔生産性
    • 『大規模』で『納期重視』なPJほど生産性が求められる
    • 『小規模』で『クオリティ重視』なPJほど創造性が求められる
  • ジェネラリスト⇔スペシャリスト
    • 『大規模』で『クオリティ重視』なPJほどスペシャリストが求められる
    • 『小規模』で『納期重視』なPJほどジェネラリストが求められる
【#3:自身の属性と照らし合わせてみる】

最後に、自身のプランナーとしての立ち位置を照らし合わせてみます。

…前職のPJのほうが向いとるやないかーーーーい!!!

『前職の開発環境のほうが自身のプランナー属性的には合っている』は実感としてあるため、感覚とズレていない結果となりました。

(ちなみに転職自体はこの検証を行うまでもなく、理解した上で行いました。あえて茨の道となる現環境を選んだわけですが、この理由についてはまた別の記事で語ることとします。)

そしてもう一つ分かったことは、私の場合『自身が得意とする領域に近いPJには、自分が理想とする開発環境があるかもしれない』ということです。

  • 比較的小規模
    • コミュニケーションコストが低く、やりたいことを即座に実行しやすい
    • 個々の活躍の場が広く、不完全燃焼感があまりない
    • 表現したいエッセンスが薄まりづらい
  • クオリティは中の上程度
    • クオリティ向上のためにやらざるをえない、非合理的な作業が比較的少ない

今の環境に対して抱いている不満が軽減される内容となっている
 ⇒逆に言えば、これらの要素を現環境で実現する方法こそが現状の打開策になる

今の職場に適応するために…

  • コミュニケーションコストの高さを軽減する工夫を探してみる
    • 探せば近しいテクニックは見つかりそうなので調べる
    • 自分の都合の良い環境と業務フローが構築できないか考えてみる
  • クオリティのための非合理性と向き合う
    • エンタメとはなんたるか?を見つめなおしてみてもいいかも?
    • 色んなクリエイターの”こだわり”の差を探してみてもいいかも?
    • 自分自身が”こだわり”を出す機会を増やしてみるか?
    • 他人の”こだわり”に対して共感しようとする努力をしてみるか?

結論

大雑把な仮説を立ててみましたが、自分の実感通りの結果が出せた上で、今の職場に対するモヤモヤが軽減するアクションプランが立てられた気がします。
実際に正しいかはさておき、自分的には少しスッキリすることができたので、こんなところで終わろうと思います。

ではまた次回。

*1:独自性と読み替えてもいいかもしれません。

ゲームプランナーの私がブログを始める理由

はじめまして!
ゲーム業界で数年働いている中堅ゲームプランナーのアローです。
当記事では、私自身のことを少し紹介するとともに、このブログのテーマや方針について書いてみたいと思います。

略歴

  • 東京生まれ東京育ちのアラサー
    • 田舎の何もないところへ行くと不安になっちゃうタイプ。
  • 青春の記憶の8割はゲーム
    • ハード遍歴:PS1→PS2GBA→DS→PSP→PC→PS3PS4→Switch→PS5
      (プレステっ子)
    • 親父のDQ7のデータを誤って削除して本気で怒鳴られたのが、最古の泣いた記憶。
  • 平均ちょい下の情報系の大学に合格
    • 在学中に作った自作ゲーを盾に、ゲーム会社オンリーで就活。
    • 結果3社から内定を貰い、無事ゲーム業界に。
  • ゲーム会社1社目
  • ゲーム会社2社目
    • 一昨年に初の転職済。
    • 3本目:某RPGの開発中期のプロジェクトに参加中。

好きなゲーム

プレイステーション系で絞ってみました。
ゲーマーには私の人となりがわかることでしょう。

PS1。最高の時代。
PS2。最高の時代は続く。
PS3。UMVC3は神。
PS4。一時不作でコンシューマ危うかった。
PS5。コンシューマー万歳期再来。

本ブログのテーマ

一通り自己紹介は出来たと思うので、本ブログのテーマについて語れればと。
ブログタイトルや職種を名乗っていることから何となくお察しだと思いますが、本ブログでは下記のようなテーマを扱っていきます。

【テーマ】

  1. ゲーム会社(業界)について
  2. ゲーム開発にまつわるアレコレ
  3. ゲームを中心としたエンタメについて(ゲーム/映画/音楽/アニメ/娯楽施設)
  4. ゲームプランナーとして最近思ったこと、備忘録

中堅と認識される年数に突入し、考え事も増えるお年頃。
考えすぎて脳に膿が溜まっているような感覚がする今日この頃。
このブログは、そんな私が膿み出し(アウトプット)をするために開設しました。

しかし、私は決して優秀なゲームプランナーではありませんので、知見を得ようと期待される方の期待には沿えないと思います。

でも

『自頭が平均程度の平凡な人間』ゲーム会社で働いてきた経験をもとに、開発現場の生々しい話や業界人としてのリアルな心境を添えつつゲーム開発やエンタメについて語りたい思うので、ゲーム好きや超人以外の業界人には共感できる内容にはなると思います。というか、そうしていくつもりです。

次の記事について

次の記事については未定ですが、先の略歴については別記事で追って詳細を書いていこうと思います。

  • ゲーム会社への就職活動について
  • 各ジャンル別のゲーム開発について
  • ゲーム業界の転職について
  • 1社目と2社目の開発現場の違いについて

あたりは記事にしてもいいのかな~と、書きながら思いました。

というわけで、初記事は以上。
ではまた次回。

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