今週は仕事始めの週で、人の入れ替わりも活発な時期。
私のチームにも新たに中途入社の方が加わったりしたので、今回は中途入社直後のアレコレについて自身を振り返りつつ、思ったことを書いてみる。
中途の前評判
「カプ◯ンで7年◯◯やってた人が来るらしいよ」
「バン◯ムの◯◯でチームリーダーやってた人らしい」
「東◯で5年アニメ作ってたらしい」
内定承諾〜アサインまでの期間、現場では大抵こんな噂が立つ。会社名と携わったプロジェクトから、その人に対する人物像と期待が醸成されていく期間。
人が増えるのは単純に喜ばしい&ワクワクするイベントなので、悪気なく期待が膨らんでいく。
そして、特にゲームプランナーは携わるタイトルと担当箇所によって仕事の領域がガラりと変わるので、期待度はタイトルにかなり引っ張られる。
たとえ経験している領域が全く同じ(例えばRPGのサブクエ担当同士)であっても、タイトル次第でやってることは千差万別。
もし上記のような大型タイトルであればゲームプランナーは基本触っているので、面接をせずともその人に期待するスキルや振りたい仕事が頭に浮んでくる。
そして実際に会って前職の開発環境を聞いてみると、思ったよりローテクな作りであったり、開発環境が凄惨だったりするもの。経験上、8割方「あんなに有名なゲームがそんな環境で作られていたなんて!」となる。どこも奇跡的なバランスでゲームが成り立ってるんだなぁと感慨深い。
初めて転職する側の心境
初めての転職は不安なもの。
私も一昨年に人生初の転職をしたので、転職する側の心境をまだ鮮明に覚えている。
- これまでの開発環境とどれだけ違うんだ?
- 求められるクオリティラインは?
- 仕事のスピード感は?
- 他職種との接し方はどう変わる?
- 仕様書やタスク管理の文化はどれだけ違う?
- プロジェクトの空気感は?
- 気難しい人や厄介な人がどれだけいるのか?
- 全体的にピリついていた空気なのか?緩いのか?
- 活気とスタッフの意欲度は?
- 指示系統はまともなのか?
- スケジュールの切迫度は?
- 労働環境は?
- 残業時間は?
- 責任領域の広さは?
- どれだけプレッシャーがかかる?
- 勤怠の緩さは?
- 自分が求める環境はあるのか?
- どれだけこだわれる?自分のエッセンスが出せる?
- どれだけ裁量を持てる?
- 優秀な人はいる?
- ライフワークバランスはどうなる?
考えたところで仕方のないことばかりだが、なんせこれまでの職場を他所と比較したことがなく基準がないので、大抵はこんなことが頭に浮かぶ。
さらに企画職のシゴデキ具合はピンキリなので、使えない奴は本当にどうしようもないくらい使えない(居る意味がない)し、使える奴はそいつに全てを委ねたくなるくらい使える。それが分かるからこそ、より不安になる。
当人のスペック次第では、創造性が不要な単純作業しか回されなくなる可能性があるのが企画の怖いところ。
※こういった問題の対策として、1年単位でクビにできるように「正社員では取らず全員契約社員で採る」というゲーム会社も存在する。有名どころだとスク〇ニとか。
※ちなみに私の現職で、実際にクビになった人を初めて見かける機会があった。詳しい話は聞いてないが、2~3年目の新卒入社で、仕事ができない上に素行が悪かったため自主退職(という名のクビ)となった模様。コワイ。
大袈裟だが、「新しい現場でもし自分が使えないヤツだったらどうしよう…最悪数ヶ月でクビかも…」くらいの憂いを抱いてしまう人もいるかもしれない。
半面、躁鬱でいう躁状態のときには「俺が世界を変えてやるんじゃい!」くらいの意気込みと、どれだけ自分が通用するのか楽しみというワクワク感があったりなかったり。
残酷な現実①
ポータブルスキルが抽象的な物が多く、プロジェクト次第で仕事の内容もガラりと変わるゲームプランナーは、前職の経験を活かしづらい。よって配属直後は「生まれ持ったもの」がものを言う。それは頭の良さであったり、コミュ力であったり、人心掌握力であったり、図々しさ(意外と重要)だったり。
そして配属から1ヵ月もすれば大方の「開発状況」「周囲との人間性能差」「その上で自分に求められていること」を認識させられることとなるだろう。(受け入れる側は更に短い期間でその人の人間性能をなんとなく察してしまうし、それによって接し方も変わる。残酷。)
残酷な現実②
前職の経験が活かしづらいのには他にも理由がある。それは、企画の内容は「誰がどのタイミングで言ったか」が重要であるからだ。(これは「ゲームプランナーに対する評価はどのように決まるのか」が大きく関係してくるのだが、長くなるのでこれはまた別の機会に。)
ぎゅっと要約すると、”その会社内での“信頼と実績によって動かせる範囲が変わるという当たり前の結論なのだが。
成果が示しづらい企画職だからこそ、前職でどうであったかは関係なく、立場も仕事の内容もまた新入りまで戻るため、また1から実力を周囲に示し続けなければならない日々が始まる。
それでもやるしかない
現場では「自分が何を求められているかを認識し、身の丈に合った範囲で最大限のパフォーマンスを出す」ことが求められ、これが結果的に最もゲームのクオリティに貢献することになる。会社員としてゲームを作るとはそういうことで、こういった姿勢を継続することでしか信頼は積み上がらない。
これが分からず勘違いして図に乗っている開発者を稀に見かけるが、非常に周りに迷惑が掛かるのでやめていただきたい。特にデザイナー職に多い傾向(唐突なディス)
どれだけ前職の経験と実績があろうが、中途入社のゲームプランナーはこれを留意した上でプロジェクトに対して自身を最適化し直す必要がある。この最適化が済んで初めて新天地のスタートラインに立てたと言えるだろう。
この域まで来るのに、平均して2か月~3か月は掛かると思う。
3ヵ月もすれば大体の人が職場に馴染むのもこのためかもしれない。
クリエイティブ職としてのプライドは持っていてもいいが、こういったことを忘れた途端に現場では摩擦が起き、色んな人から恨みを買うことになる。ゲーム会社でゲームを作るということ、そしてゲームプランナーの転職とは、そういうもの。
...なんとも爽快感がない話だったが、もし初めての転職を控えているゲームプランナーがいれば、現実問題として考えておいて欲しい。これを弁えていれば、少なくとも嫌な顔をされることは無いはずだ。
それではまた次回。